私が美容界に入って早30年という月日が流れ、およそ3万人もの髪に携わらせていただきました。
サロン勤務を始めたばかりの当時の顧客様からは、少しでも至らない接客や技術が目に付いた時には容赦なく厳しい言葉を投げかけられましたが、まるで母親のような広い心で接していただき、「私がこの新人を一人前に育てる」気概を感じました。
修業時代に顧客様におっしゃって頂いた「あなたのブローでなければ駄目なの!」というひと言が、今でも私の心の支えとなっています。
傷まない薬液による施術の効率化と髪ダメージの悪化
「短時間で効率良く少しでも多くの沢山の顧客様をこなしたい」
「出来れば手間が掛からずに短期間で髪を綺麗にする方法を知りたい」
最近のメディアの報道を眺めていると、簡単・便利・手間要らずなキーワードが流行っているように見受けられます。
美容技術も例外ではなく、初めて私のサロンにお越しいただいた顧客様からのお悩み相談に耳を傾けていますと、いかに効率的に髪型を作るか?という美容技術のシステム化や薬液の良し悪しばかりに囚われて、技術力の土台となる施術プロセスや美しさの基本となる髪の健康を軽視しているように感じます。
家作りに例えるなら、外観ばかりを気にして基礎や柱の構造を疎かにし、チョットした刺激でも崩れやすい欠陥住宅を建てるようなもの。
どんなにハサミの使い方がカッコ良くて素敵な髪型に仕上がったとしても、とかし方が少しでも雑であればそれだけで髪は傷ついてしまいます。
また、髪が傷まないと謳われている薬剤であっても、化学薬品から出来ているという認識・毛髪に対する気遣いやお肌への配慮を少しでも欠いてしまえばたちまち刺激過剰となり、髪の弾力やツヤは失われ刺激に弱いお肌は肌荒れを起こしてしまうのです。
美容技術の約9割は薬剤以外の施術プロセスで成り立っています
どんなに髪に優しいパーマやヘアカラーの薬剤を使っていたいたとしても、髪が絡んでいても力を入れてガシガシとかす、ゆすぎのお湯の温度が熱すぎる、力任せにゴシゴシ洗うだけのシャンプー、施術時間の短縮化のために無理矢理加熱、アイロンやドライヤーの当てる角度や温度が不適切…等の、施術プロセスを軽視したが故に簡単に傷ついてしまう、乙女心みたいにデリケートな髪。
顧客様から大切なお金を頂く以上、傷つきやすい髪を痛めずに美しく仕上げるのが髪のプロである美容師の務め。
私は髪の健康と自然な美しさ(素材美)を第1に考えています故、どんなに流行っている技術やどんなに有名メーカーの造った髪を傷めない薬液であろうと、髪の健康と自然な美しさを損なったり納得できる技術レベルに到達するまでは、顧客様には絶対提供いたしません。
「あなたの髪質が悪かったからパーマが上手くかからなかった」
「あなたの髪ダメージが酷かったからヘアカラーの色の入りが悪かった」は美容師側の良い訳です!
おとなキレイ·サポーター 田中和義 より